我が国の未来を見通す

メルマガ軍事情報の連載「我が国の未来を見通す」の記事アーカイブです。著者は、元陸将・元東北方面総監の宗像久男さん。我が国の現状や未来について、 これから先、数十年数百年にわたって我が国に立ちふさがるであろう3つの大きな課題を今から認識し、 考え、後輩たちに残す負債を少しでも小さくするよう考えてゆきます。

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我が国の未来を見通す(45)「気候変動・エネルギー問題」(10)「『地球温暖化』と対極にある考え方」(2)

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我が国の未来を見通す(45)「気候変動・エネルギー問題」(10)「『地球温暖化』と対極にある考え方」(2)

□はじめに

 3日の「文化の日」は北朝鮮の弾道ミサイルに対する「Jアラート」で慌ただしい朝を迎えました。発射された3発のミサイルのうち1発はICBMだったらしく、日本海上空で消滅したようです。その原因は失敗なのか北朝鮮による強制破壊なのか不明ですが、いずれ判明することでしょう。夜にも短距離ミサイルが発射されました。

今年に入って30回を超える発射になりますが、そのつど、日本政府は、「言語道断」「明確、かつ重大な挑戦だ」「暴挙であり、決して許されない」と精一杯の非難(批判というべきか)を繰り返してきましたが、北朝鮮の暴挙を止める効果が全くないことは明白です。

北朝鮮、少なくとも金正恩は、米国、日本、韓国、あるいは国際社会の反発などはとうに織り込み済みで、全く意に介さず、まさに「国家の生存のための最善の処置」と確信し、ミサイルや核兵器を開発し続け、必要な実射実験などを繰り返しています。近く核実験も再開することでしょう。

ウクライナ戦争によって国際社会の対立構造に変化が生じ始めたことも北朝鮮の暴挙を勢いづけさせていると考えますが、今回は、米韓合同演習(その延長)に対する報復処置の意味もあるように、この種の演習の必要性は微動だにしなくとも、結果として、さらなる挑発を誘い、非難の言葉同様、彼らの暴挙を止めることは不可能でしょう。

あの強硬なトランプ大統領は、北朝鮮との「対話路線」に踏み切り、板門店から、わずかではありましたが、38度線を越えて北朝鮮国家の土を踏みました。北朝鮮と“最小限の共存をするための知恵”であったことは間違いないと考えます。しかし、それを可能にしたのは、米国は北朝鮮をはるかに圧倒する核兵器を含む軍事力や経済力を保有し、国際社会、少なくとも我が国や西欧列国の支持があり、それらが背景となっての「対話路線」でした。

またしても、「それに対して」、というつもりはありませんが、我が国は、抑止力としての核兵器について戦後一貫して「非核三原則」政策を保持してその議論さえも封じ続け、広島県出身の岸田首相は、「核廃絶」をまるで国策のように説きまわることを自らの使命と考えているように見えます。

このような状態を○○などと揶揄するのは止めますが、北朝鮮が国策として「国民の今日の生活よりも国家の明日の生存を優先している」ことは間違いなく、「国家が消滅してしまえば明日の生活は保障されない」ことについて、自由意志か強制かは別にして大方の国民が信じ、自分たちの生活を我慢してでも核兵器やミサイルの開発を理解し、支持しているとの見方をする必要があります。北朝鮮国はそのような国であると理解しなければなりません。

わずか70数年前の日本も、見方を変えれば今の北朝鮮と同様でした。各国が競いながら植民地政策を強行してきたことを自ら「正義」とした欧米列国に対して、異論を唱え、最後は孤軍奮闘しましたが力及ばず敗北しました。当時は「国体護持」という標語を用いましたが、まさに「国家の生存」を懸けた戦いだったと考えます。その歴史的評価については、依然、各論がありますが、「生存を懸ける」意気込みは本物でした。

戦後の今はどうでしょうか。北朝鮮同様の国策の一部でも政府が発表すれば、国中で“ハチの巣をつついだ”ようになるのは明白です。周辺情勢の変化からようやく防衛力強化が当たり前のようになってきて、GDPの2%、つまり現行の約2倍の水準に防衛力を高めようとしていますが(5年間で48兆円と報道されています)、この場に及んでも、財政当局が財政支出の削減を主張したり、「状況認識」が不十分なだけでなく、別な思惑からの意見や議論もあるようです。

すでに何度も繰り返して述べていますが、本シリーズで取り上げているような、我が国の未来に立ち込めるであろう“暗雲”に適切に対処するとともに、中国、ロシア、北朝鮮などが今後仕掛けて来るであろう国防上の問題を有効に未然に防止し、かつ国家として生存を担保するため、まさに明治維新のように「強靭な国家」を創り上げる必要があります。そのため、ある時は国民の意志を汲み取り、ある時は(意志に反しても)断固として国家を舵取りする“知恵があり、力があるリーダー(たち)”を輩出ことが何としても求められていると考えます。今回のような事案が起こるたびに、ひたすら「手遅れにならない」ことを願うばかりです。

▼「地球温暖化」の予想は外れている

さて本論に移りましょう。「地球温暖化」の予想、特にその原因として人間の活動が作り出すCO2が原因となる「人為的地球温暖化」については、すでに紹介しましたように、国連を中心に世界中の「地球温暖化論者」たちが繰り返し述べてきました。

一方、それを否定する、つまりその対極にある考えを述べる科学者(「温暖化否定論者」と名付けましょう)も世界中至る所に存在することも事実です。彼らは、「地球温暖化による予測はどれも外れている」として次のような代表例を示しています。

1)1987年に地球温暖化論者の米国NASAのハンセンが「2020年までに地球の平均気温は3℃上昇する」と述べたが、実際の上昇は0.5℃だった。

2)21世紀の初めに、アル・ゴアはじめ何人もの人が「キリマンジャロの雪は2020年までに消滅する」と予測していたが、今に至るまで雪は消滅していない。

3)2009年に、米国地質調査所のファグレが「モンタナのグレイシャー国立公園(私も40数年前に訪問したことがあります)の氷河は2020年までに消滅する」と予測したが、2020年になっても氷河は健在だ。

4)2000年、イギリスのイースト・アングリア大学の気候研究ユニットの科学者ヴァイナーが「2020年には英国では雪は降らなくなるだろう」と予測したが、雪は今でもよく降っている。

このように、「『地球は、化石燃料起源のCO2の排出により温暖化している』というストーリーに基づいた未来予測は、これまではすべてが外れている。『予測がことごとく外れた以上、この理論は間違っている』と考えるほかない」と断言しています。

そして、予測と現実の食い違いについて、温暖化論者たちから語られることは全くないことも批判し、「その話がインチキと分かると、メガソーラーや電気自動車、その他もろもろの商売の正当性を失って、それで儲けている人々や企業が困ってしまうので、過去の予測が外れたことに頬かむりをして、しらばっくれている」とも付け加えます。

さらに、都合の悪い話に人々が目を向かないように、新しい胡散臭いデータを引っ張り出して、「このままCO2を削減しないと、2050年には地球は大変なことになる」と言って、恐怖を煽っているというのです。

つい最近の10月27日、国連環境計画(UNEP)が「各国が地球温暖化対策を現状から強化しなければ、今世紀末までの気温上昇は2.8℃に至る」という新たな報告書を発表したばかりですが、温暖化否定論者の考えに少し耳を傾ければ、国連の発表とはいえ、素直にこの「恐怖」を受け入れることは難しくなります。

温暖化否定論者はまた、「こうも地球温暖化の未来予測が外れるのは、人為的なCO2の増減のみを変数としている『気候変動』のシミュレーションがいい加減だからだ」とも断言しています。たとえば、太陽の黒点の増減でも気候変動は起こり、黒点が減少すると寒くなるとして、17世紀半ばから18世紀初頭にかけて、太陽の黒点がほぼ消えてしまった「マウンダー極小期」に地球が寒冷化したように、CO2濃度よりも太陽の黒点数の方が気温変動の原因となると指摘します。

また、火山の爆発も気温変化に大きな影響を及ぼすことを指摘します。火山が爆発すると、亜硫酸ガスが大量に発生して寒冷化が進むことがわかっています。1991年、陸上で発生した20世紀最大規模の大噴火といわれた、フィリピンのルソン島にあるピナトゥボ火山の噴火で、翌年には世界の温度が0.5℃下がりました。日本もこの影響を受けて、1993年の夏は“冷夏”になって、米や野菜が不作だったことは記憶に新しいところです。

このような火山の大噴火は、100年単位でみるとだいたい2~3回必ず起きていることから、巨大火山が何度か噴火するとCO2による温暖化などはすぐ帳消しになるというのです。

 他にも、地球温暖化脅威論として例示された現象と実際の現象を比較してみますと、「温暖化が進めば南極の氷は溶ける」と主張していますが、現在逆に、南極の氷は増えているようですし、「北極の氷が溶ければホッキョクグマが絶滅すると煽ったのが、現在、クマの数は過去最高に増えているとのデータもあります。

 2006年、NHKが「温暖化によって、海面が上昇し、太平洋の島国ツバルは水没する」という特番を流し、当時の環境大臣だった小池百合子氏が現地を訪れて話題になりましたが、ツバルの海面の高さ(潮位)はほぼ横ばいで、いまだ水没する気配すらないようです。

私は、これらを知って「いやはや」という気になりましたが、読者の皆様はいかがでしょうか?

▼「加工」値が生み出す「地球温暖化」

 さて話を変えて、これ以降、まず地球温温暖化説の根拠となっているデータの信ぴょう性を解析してみましょう。

 地球温暖化論者は、国連のIPCCをはじめ、アル・ゴア氏やビル・ゲイツ氏も含めて、地球温暖化の根拠として「1850年から2018年までの平均気温推移グラフ」を使っています。前にも紹介しましたが、産業革命以降、地球の平均気温が上昇中で、中でも1970年ごろからその上昇率が大きくなっているというグラフです。このグラフを使用して、「パリ協定」でプラス1.5℃という目標になり、前述のUNEPは、このままの上昇率で推移すると2100年には2.8℃上昇すると発表したのです。

 この平均気温推移グラフがどのようにして出来上がるのかを調べてみて、私自身は絶句してしまいました。グラフは次のような手順で作られています。

①諸国の気象機関が得た気温データを米国の国立気候データセンター(NCDC)に送る。

②NCDCは、気温データを「加工」したのち、世界全体の全球気候史ネットワーク、米国だけの米国気候史ネットワークというデータベースにして公表する。この際、米国航空宇宙局のゴタード宇宙科学研究所(GISS)や英国気象庁所属の気象研究ユニット(CRU)もNCDCのデータをそれぞれ独自の「加工」を施し、出来上がった「作品」が世界に向けて発信されるのだそうです。

なぜ「加工」されるのかについての理由は次の4つといわれます。

(1)温度の読み取り時刻を変えると測定値が動く、

(2)温度計や測定法を更新すると測定値が動く

(3)観測点を動かせば測定値が変わる、

(4)近い観測点の気温は似ているとみて互いに補正する。

ここで(1)から(3)までは議論の余地はないといわれますが、問題は(4)であり、「都市化」の効果を補正するための「加工」といわれます。

この「都市化」による気温上昇は、都市の住民は狭い場所で大量のエネルギーを使うことから明らかになっており、なかでも電力消費と自動車の走行が発熱の両横綱といわれます。アスファルトの照り返しのような気温上昇や道路の舗装が熱を貯めて夜間の気温を上げるような温室効果も私たちは経験上理解しています。

細部の推計は省略しますが、気象庁がホームページに載せているデータから、東京の気温は、1876~2014年の139年間で「2.4℃上昇」したようですが、東京の気温上昇が約1.5℃だった1950年~2014年の65年間、東京から180キロメートル離れた三宅島の気温はほとんど上がっていないとデータも残っています。つまり、都心の「温暖化」は、CO2の温室効果よりも「都市化」による排熱が原因となっていると推定されています。

都市部と郊外との基本上昇に差があるデータは香港やインドなどで測定されており、これらから、「人間が出すCO2の温室効果が効くというなら、どのような場所の気温も似たような形でともに上昇するはず」ですが、実際のデータはそうなっていないのです。

 「都市化」は、1960から70年頃から世界各地で激しく進み、もし、実測した気温データに「都市化」の補正のために「加工」するなら、「都市化による気温上昇分を下げる」というのがまっとうな感覚と考えられますが、上記NCDCやGISSの「加工」後のグラフはその逆で、「都市化」による気温上昇の実測値をそのままにして、“過去の測定値を下げている”のだそうです。よって、結果として「都市化」の分が上乗せされたような形で平均気温が上昇するのは明白なのです。

GISSは、(4)の「近い」を「1200キロメートル圏内にある田舎と都市の気温変化を「よく似た姿に加工」しているとのことです。「世界のグラフ」作業に利用する観測点は世界に2100カ所あり、日本にも40カ所あります。そしてその1カ所である八丈島の平均気温の実測値はほぼ横ばいなのに、GISSによって「加工」されたグラフはこの110年間に約1.5℃上昇しています。おそらく、1200キロメートル圏内の大中都市の実測値に合わせる「均質化」が効いたのだろうと推測されています。

なお、気象庁も八丈島の気温グラフを「加工」しているとのことで、「長期傾向:100年で0.7℃上昇」とホームページに掲載していますが、同じ八丈島の気温変化は、過去100年間で「ほぼ横ばい」(気象庁の実測値)、「0.7℃上昇」(気象庁の加工値)、「1.5℃上昇」(GISSの加工値)の3つあることになります。実は、GISSの加工前の八丈島のデータは、気象庁の実測値と微妙に違うそうで、それを含めると4つあり、どれが八丈島の真実か不明なのだそうです。

国土の狭い日本は、観測点40カ所のほぼ全部が「1200キロメートル」ルールでつながるということで、日本の基本変化は、都会地とか田舎にかかわらず「100年で約1.5℃上昇」となっています。

そのような「加工」後のデータがIPCC報告書に入り込み、国連をはじめ、地球温暖化論者たちが何の疑いもなく、それらを活用している構図が浮かび上がってきます。この事実について、渡辺正氏(『「地球温暖化」狂騒曲』の作者))は、「気温データの『加工』も人間活動の一種とみれば、まさに『人間活動が起こした温暖化』といえよう」と述べています。

実際に、「都市化」の影響を除きたいとの考えから、田舎のデータだけを使うことを考えた米国海洋大気庁(NOAA)は、都会から離れた全米114地点、ハワイの2地点、アラスカの8地点の観測点を整備し、2005年から2018年までの月平均気温を測定しました。その結果、まだ14年間の短期間とはいえ、気温はほとんど変わっていないとのことです。時間が経てばCO2の温室効果が実測される可能性もあるのでしょうが、トランプ大統領の地球温暖化批判もこのような実データが根拠になっているのかも知れません。

海外においても、「GISSなどが行なう気温データの加工は捏造だ」と批判するブログ類も多いといわれますが、「だれかが何かの意図をもって加工している」という見方が否定できないも現実です。このような「加工」の真実について、地球温暖化論者たちはどのように考えているのか、一度訊ねてみたい衝動にかられます。地球温暖化を否定するデータは他にもあります。次回以降紹介しましょう。
(つづく)


宗像久男(むなかた ひさお)
1951年、福島県生まれ。1974年、防衛大学校卒業後、陸上自衛隊入隊。1978年、米国コロラド大学航空宇宙工学修士課程卒。陸上自衛隊の第8高射特科群長、北部方面総監部幕僚副長、第1高射特科団長、陸上幕僚監部防衛部長、第6師団長、陸上幕僚副長、東北方面総監等を経て2009年、陸上自衛隊を退職(陸将)。日本製鋼所顧問を経て、現在、至誠館大学非常勤講師、パソナグループ緊急雇用創出総本部顧問、セーフティネット新規事業開発顧問、ヨコレイ非常勤監査役、公益社団法人自衛隊家族会理事、退職自衛官の再就職を応援する会世話人。著書『世界の動きとつなげて学ぶ日本国防史』(並木書房)

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著者

宗像久男

1951年、福島県生まれ。1974年、防衛大学校卒業後、陸上自衛隊入隊。1978年、米国コロラド大学航空宇宙工学修士課程卒。陸上自衛隊の第8高射特科群長、北部方面総監部幕僚副長、第1高射特科団長、陸上幕僚監部防衛部長、第6師団長、陸上幕僚副長、東北方面総監等を経て2009年、陸上自衛隊を退職(陸将)。日本製鋼所顧問を経て、現在、至誠館大学非常勤講師、パソナグループ緊急雇用創出総本部顧問、セーフティネット新規事業開発顧問、ヨコレイ非常勤監査役、公益社団法人自衛隊家族会理事、退職自衛官の再就職を応援する会世話人。著書『世界の動きとつなげて学ぶ日本国防史』(並木書房)