我が国の未来を見通す

メルマガ軍事情報の連載「我が国の未来を見通す」の記事アーカイブです。著者は、元陸将・元東北方面総監の宗像久男さん。我が国の現状や未来について、 これから先、数十年数百年にわたって我が国に立ちふさがるであろう3つの大きな課題を今から認識し、 考え、後輩たちに残す負債を少しでも小さくするよう考えてゆきます。

Home » 気候変動・エネルギー問題 » 『地球温暖化』と対極にある考え方 » 我が国の未来を見通す(44)「気候変動・エネルギー問題」(9)「『地球温暖化』と対極にある考え方」(1)

我が国の未来を見通す(44)「気候変動・エネルギー問題」(9)「『地球温暖化』と対極にある考え方」(1)

calendar

reload

我が国の未来を見通す(44)「気候変動・エネルギー問題」(9)「『地球温暖化』と対極にある考え方」(1)

□はじめに(最近の内外情勢から)

 今回から、「『地球温暖化』と対極にある考え方」について手順を追って紹介しつつ、読者の皆様と一緒に考えて行きたいと思っています。ただ、業務多忙につき、今回はその導入だけにとどめ、昨今の内外情勢の“動き”がすさまじく、眼が離せない状況と認識していますので、とても旬な内外情勢のポイントのみを紹介することにします。

まず中国です。本メルマガではあまりまとまった形で中国を取り上げてきませんでしたが、日本の国防に対する影響たるやロシアの比でない中国については、いずれ様々な形で紹介せざるを得ないと考えていました。

 中国共産党大会が終わって習近平総書記が異例の3期目に突入、新指導部もかつての側近など身内で固めたようです。とはいえ、大会の最終局面で、前国家主席の胡錦涛が係員に腕をつかまれながら退席をさせられたことは何を意味するのか、なぜあの映像だけを公開したのかなど、何とも不可解な気持ちのままニュースを見入っていました。

 「独裁の国賊、習近平を罷免せよ」との横断幕が厳戒態勢の北京で掲げられたこともニュースになりましたが、どうも「3期目体制は盤石である」と言えるわけではなさそうです。

 習総書記は、共産党大会の初日から「台湾への武力行使を絶対にあきらめない」「祖国の統一は必ず実現しなければならないし、実現できる」と強気の発言を繰り返しましたが、18日に予定していた国家統計局の発表を延期し、3期体制が確実になった24日に突然、「7~9月のGDPが3.9%にとどまった」と発表しました。

 ゼロコロナ政策があったとはいえ、中国経済が、かつて日本も経験したように、高度成長期を終え、減速し始めていると見るのが妥当なのでしょう。経済政策について、習総書記は「無秩序な資本の拡張防止」を打ち出すなど大胆に転換を行なうと宣言しましたが、安全保障政策よりも国民の生活がかかっている経済政策を重視するだろうとしても、世界経済と密接な連携の上に成り立っている中国経済は、今後、世界経済のリスク要因になる可能性が高くなるとの観測もあるようです。当然、その逆もあることでしょう。

 一方、これまでの人類の歴史が示すように、経済政策が行き詰った時、国民の関心をそらす目的から台湾侵攻に打って出る可能性も低くないでしょうから、今後、すでに始まっている、中国の得意な「情報戦(認知戦)」として習政権の言動からは目を離すことができないと考えます。

次に、ウクライナ戦争です。プーチン大統領が東部の占領地域に「戒厳令」を発したり、火力発電所を攻撃してウクライナ国民に心理的圧力をかけたりと、ウクライナの反転攻勢に対処できず、プーチンの期待を裏切っている軍を補完する作戦として、ほぼ予想の範囲内の行動を展開していると考えます。

 加えて、「ウクライナが“汚い爆弾”を使う可能性がある」とわざわざロシアの国防相が西側の国防相にチクったり、プーチン大統領が自ら言及するなど、あまりに幼稚とはいえ、ロシア流の「認知戦」も展開しているようです。目的は明らかでしょう。

 一方で、事前にアメリカに通告したとは言え、プーチンの直接指揮のもと核攻撃訓練を実施しました。このように徹底して“手順を踏む”こと自体が核戦力ならではの特性であると考える必要があるのでしょうが、危険水域にまた一歩近づいたことは間違ないでしょう。

さて、これらのニュースと対比するように、イギリスのトラス首相が在任期間最短の45日で辞任したというニュースもショックでした。そして、アジア系初でこれまでの最年少、42歳のスナク首相が誕生するようです。

 貴族制度が残るイギリスにおいて、アジア系の首相が誕生するのは、アメリカで黒人大統領が誕生するよりもっと難しいと思っていましたので、イギリス社会も「多様性尊重」かと思いきや、妻は大手IT会社の共同経営者の娘で、過去に「貴族や上流階級に友人はいるが、労働者階級に友人はいない」と発言しているなど、なかなか評価の難しい人物のようです。財政再建を最優先の政策とするようですが、長期安定政権になるかどうかは未知数でしょう。これらから、私は「(内閣が短命という意味で)イギリスの日本化」が始まったと考えています。

北朝鮮も言うに及ばず、依然、国民の多くが明日、食うに困っているような国家でありながら、際限なくミサイル発射試験を繰り返し、再び核実験さえ実施しようとしています。また、間もなく中間選挙を迎えるアメリカは、共和党有利との観測の中、バイデン政権の最後の切り札というもいうべきか、トランプ前大統領に召喚命令が出たことがニュースになっています。

さて、このような旬な国際情勢の動きなど全くどこ吹く風、我が国の国会やマスコミは某宗教法人にとりつかれたように、その話題に終始しています。これらの議論に疑問を抱き、呆れ、この映像が流れるとチャンネルを替える国民も多いだろうと想像しながら、私自身もそのような日常を繰り返しています。

最近、中国人の多くが中国共産党の動きなどに全く関心がなく、政府や国家にはほとんど期待していないということを知る機会ありました。それが、中国人が中国で生き抜くための“処世術”なのだと理解しました。

 一方、私は、民主主義国家である我が国にあっても同じような現状が起きているのではないか、と思い始めています。政治家が国会で何を議論しようが、マスコミがそれをどう取り上げ、いかに報道しようが、ほとんどの国民(特に新聞を読まずテレビを観ない若者など)の関心外で、自分たちの生活改善のために国家が何をやってくれるかなどについてもほとんど期待していない。だから腹も立たないのではないでしょうか。

 10月25日、野田元首相が立派な安倍元首相の追悼演説を実施しました。最後に、安倍氏の残したものを実現するために、国会議員が何をすべきかについて、切々と語っていたと理解していますが、ここに示されたような国会議員像と“現実”のギャップがかなり大きいことを知っても腹が立たなくなったら、「我が国の民主主義が死滅したも同然」なのではないでしょうか。

 私はまだ腹が立っています。「このようなことにかまけている場合か!」と国会議員の先生方を叱咤したい気持ちでいっぱいです。我が国は今が正念場であり、そのような認識のもと国会議員の先生方には、我が国の将来のため、何をすべきかを真剣に考え、国をリードしてもらいたいと考えます。皆さんはいかがでしょうか。

▼「『地球温暖化』と対極にある考え方」分析手順

今回は、「はじめに」がメインのメルマガになってしまいました。本題は、次回以降、順を追って展開していきますが、その“さわり”だけ紹介しておきましょう。

最初は、「地球は温暖化しているのか?」です。温暖化の根拠(尺度)となっているデータの信ぴょう性に触れ、他のデータ、たとえば約1万年の気温をみると、地球は「寒冷化」に向かっているとの分析などを紹介します。

 次に、「温暖化の原因はCO2か?」です。地球の平均気温変化に人類の活動が影響し始めたのは、産業革命後わずかに200年ほどですが、過去5.5億年までさかのぼると大気中のCO2濃度は今よりだいぶ高かったというデータもあります。また、人類の活動と関係ない火山活動や強いエルニーニョ現象のようなものは、人類の活動などと比してはるかに大きい影響を地球の気温変化に与えます。

 第3にCO2のもたらす恩恵、CO2を減らした場合の問題点なども紹介しましょう。そして最後に、なぜ「地球温暖化」なのか。誰が主導し、だれの利益になるのか、などのついて明らかにしようと思います。

結論からいえば、「地球温暖化の対極にある考え方」からみると、「地球温暖化説」は矛盾だらけに見えるのです。双方の考え方を理解した上で、私たちはアクセルを踏むのか、ブレーキをかけるのかを見極める必要があると考えます。

一方、「まだ結論を出すのは早い」という見方もあれば、逆に「CO2の5分の1は1万年も消えない」ことが事実とすれば、2050年とか2070年の脱炭素化目標などはほとんど意味がないことなどがわかります。それらを含めて一緒に考えて行きましょう。今回はこの辺にとどめておきます。(つづく)

宗像久男(むなかた ひさお)
1951年、福島県生まれ。1974年、防衛大学校卒業後、陸上自衛隊入隊。1978年、米国コロラド大学航空宇宙工学修士課程卒。陸上自衛隊の第8高射特科群長、北部方面総監部幕僚副長、第1高射特科団長、陸上幕僚監部防衛部長、第6師団長、陸上幕僚副長、東北方面総監等を経て2009年、陸上自衛隊を退職(陸将)。日本製鋼所顧問を経て、現在、至誠館大学非常勤講師、パソナグループ緊急雇用創出総本部顧問、セーフティネット新規事業開発顧問、ヨコレイ非常勤監査役、公益社団法人自衛隊家族会理事、退職自衛官の再就職を応援する会世話人。著書『世界の動きとつなげて学ぶ日本国防史』(並木書房)

この記事をシェアする

著者

宗像久男

1951年、福島県生まれ。1974年、防衛大学校卒業後、陸上自衛隊入隊。1978年、米国コロラド大学航空宇宙工学修士課程卒。陸上自衛隊の第8高射特科群長、北部方面総監部幕僚副長、第1高射特科団長、陸上幕僚監部防衛部長、第6師団長、陸上幕僚副長、東北方面総監等を経て2009年、陸上自衛隊を退職(陸将)。日本製鋼所顧問を経て、現在、至誠館大学非常勤講師、パソナグループ緊急雇用創出総本部顧問、セーフティネット新規事業開発顧問、ヨコレイ非常勤監査役、公益社団法人自衛隊家族会理事、退職自衛官の再就職を応援する会世話人。著書『世界の動きとつなげて学ぶ日本国防史』(並木書房)